検査科は、子宮がん・肺がん検診の一次検診項目である細胞診検査や大腸がん検診の一次検診項目である便潜血検査のほか、がん診断に必要性の高い病理検査、超音波検査、検体検査(血液学的検査、免疫・生化学的検査)やピロリ菌検査などを行っています。
精度の高いがん検診を支える質の高い検査情報を迅速・的確に提供するため、検査科スタッフは日々検査精度の向上に努めています。
センターに併設の細胞検査士養成所では、細胞検査専門の技術者(細胞検査士)を養成しています。
定例開催の公開講座・従事者講習会、個別対応の個別研修などの受け入れをスタッフ一同万全な体制で実施しております。
検査科は分析系、形態系の2部門に分かれて業務を行っています。
分析系 | 形態系 | ||||
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検体検査 (血液・便・尿) |
超音波検査 | 生理機能検査 (心電図、呼吸機能) |
細胞診検査 | 病理検査 | (細胞検査士養成所) |
臨床検査技師3名(超音波検査士2名) | 臨床検査技師5名(細胞検査士5名) |
大腸がんの一次検診として用いられる便潜血反応や胃がんの発生リスクを調べる胃リスク検査等を行っております。
便 | 便潜血反応 | 便中に含まれる微量のヒトヘモグロビンを検出します。 自覚症状のない「大腸がん」を見つけるのに有効な検査です。 |
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便中ピロリ抗原 | 便中のヘリコバクター・ピロリ抗原を検出し、採取時のピロリ菌への感染の有無を調べる検査です。 | |
胃リスク | 血中ピロリ抗体 | 血液中のヘリコバクター・ピロリ抗体を検出し、ピロリ菌への感染の有無を調べます。 |
ペプシノーゲン値 | 血液中のペプシノーゲンⅠ及びペプシノーゲンⅡを測定し胃の粘膜の萎縮度を調べる検査です。 | |
血液 | 生化学 | 分析装置を用い、肝機能検査、腎機能検査、膵機能検査、脂質代謝検査などを行っています。 |
血球算定 | 白血球数、赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、赤血球恒数(MCV,MCH,MCHC)、血小板数を算定し、貧血・炎症などの疾患の有無を調べる検査です。 | |
血液像 | 血液塗抹標本を作成し、血液中の細胞形態を観察します。 | |
血液沈降速度 | 炎症を伴う疾患の有無を調べる検査です。 | |
感染症 | B型肝炎、C型肝炎、梅毒などの検査を行っています。 | |
腫瘍マーカー | 「がん細胞が作る物質、または体内にがんがあることに反応して作られる物質」を腫瘍マーカーと呼びます。 がんのスクリーニングとして用いられている検査です。 |
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尿 | 尿定性 | 尿中の潜血、タンパク質、糖、ケトン体、比重、ビリルビン、ウロビリノーゲン、PHを測定します。 腎臓をはじめ全身のスクリーニング的検査として用いられる検査です。 |
尿沈査 | 尿の成分を顕微鏡で観察し、腎臓や尿路系の疾患の有無を調べる検査です。 |
<採血後の注意点>
円滑な採血の施行には、受診者さんのご協力も必要となりますことを何卒ご理解ください。
もし不明な点、不安な点がございましたら、ご遠慮なくスタッフにお申し出ください。
自覚症状のない「大腸がん」を見つけるのに有効な検査です。
<検査方法>
便中のヘリコバクター・ピロリ抗原を検出し、採取時のピロリ菌への感染の有無を調べます。
<検査方法>
血中ヘリコバクター・ピロリ抗体
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、菌に対抗するため体内ではヘリコバクター・ピロリ菌に対する抗体がつくられます。この抗体を調べることで、感染の有無を調べることができます。
血中ペプシノーゲン値
ペプシノーゲン(PG)は、胃液中に分泌されるたんぱく質分解酵素の一つであるペプシンの前駆体です。ペプシノーゲンは、免疫学的にペプシノーゲンⅠ(PGⅠ)とペプシノーゲンⅡ(PGⅡ)に大別されます。
PGⅠは主に胃底腺の主細胞から分泌され、PGⅡは胃底腺のほかに幽門腺、噴門腺、十二指腸腺にも存在します。
「炎症」を起こすと、PGⅠ、PGⅡともに増加し、PGⅠ/PGⅡ比は低下します。
「萎縮」になると、PGⅡは高くPGⅠは低下し、PGⅠ/PGⅡ比はさらに低下します。
この値をみることで、胃の粘膜の状態を推定します。
「腫瘍(しゅよう)」とは、体内の細胞が異常分裂して次第に大きくなり、しこりになるものです。良性腫瘍と悪性腫瘍があり、悪性腫瘍がいわゆる「癌」です。腫瘍の中には、特殊な物質を生産し血液中に出現するものがあります。この「腫瘍がつくる物質」、あるいは「癌細胞と正常細胞が反応してつくられる物質」が総称して腫瘍マーカーと言われています。
しかし、腫瘍マーカーの値は、「癌」が存在しなくても上昇したり、「癌」が存在しても上昇しないことがあります。また、腫瘍マーカーの多くは、数種類の癌で上昇することがありますので、癌の発生部位を特定できるとは限りません。いずれの腫瘍マーカーも、値だけで癌の存在を確定できるものではなく、あくまでも診断の補助の意味合いが強い検査です。
主な腫瘍マーカー | 特徴(臓器特異性など) |
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1)AFP(α-フェトプロテイン) | 胎児の肝臓でつくられるタンパクで、主に、肝細胞癌のスクリーニングや治療効果の判定に用いられ、肝硬変、肝炎、妊娠後期でも高値を示す。 |
2)CEA(癌胎児性抗原) | 胎児消化管に存在する癌胎児性抗原で、食道、胃、直腸など消化器系腫瘍マーカーとして広く用いられる。乳癌や卵巣癌など多くの腫瘍に高値を示し、特異性は高くない。 |
3)CA19-9 | 消化器系腫瘍のスクリーニングなどに用いられ、特に、膵臓・胆道癌で陽性率が高く、膵臓癌の治療効果の判定や再発の早期発見に効果を発揮する。 |
4)CA125 | 卵巣癌で約80%の陽性率を認める。子宮内膜症や性周期、妊娠により血中濃度が上昇するため、結果判定には注意を要する。 |
5)CA72-4 | 卵巣癌および胃癌や大腸癌の再発で高い陽性率を示し、良性疾患での偽陽性が少ないことから卵巣癌および胃癌や大腸癌の腫瘍マーカーとして用いられる。 |
6)SCC(扁平上皮癌関連抗原) | 腺癌や未分化癌の陽性率は低いが扁平上皮癌では高い陽性率を示す。子宮頚部、肺、食道、皮膚の扁平上皮癌で高値を示し、扁平上皮癌の診断や治療効果の判定に利用される。 |
7)CA15-3 | 乳癌に対する特異性が高い。原発乳癌よりも進行性乳癌や再発乳癌の陽性率が高いため、再発の予知や治療の効果判定として有用です。 |
8)PSA(前立腺特異抗原) | 前立腺にのみ存在し、前立腺癌に特異的な腫瘍マーカーですが、前立腺肥大症でも高値を示すため他の検査と組み合わせて用いられる。 |
9)DUPAN-2 10)SPAN-Ⅰ |
主に膵癌や胆嚢・胆管癌で高い陽性率を示し、膵良性疾患での偽陽性が少ないことから膵癌や胆嚢癌・胆管癌の腫瘍マーカーとして用いられる。 |
一次検診だけでなく、各外来科からの精密検査の担当も行っております。
超音波検査 | 超音波(人間の耳では聞くことのできない音波)を体表にあて、臓器や組織から返ってくる反射波(エコー)を画像化し観察する検査です。 当センターでは、腹部超音波検査と乳腺超音波検査を行っております。 |
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呼吸機能検査 | 鼻から息が漏れないようクリップで止め、口にマウスピースを咥えた状態で息を吸ったり吐いたりして行う検査です。 ①肺活量(VC):肺の呼吸全容量 ②1秒率(FEV1.0%):肺の弾力性、気道の閉塞の程度 上記の二つの指標から、肺の換気の障害の有無をみていきます。 |
心電図 | 胸部と両手・両足首に電極を付け、心臓の筋肉を動かすために発生する微弱な電気信号を波形として記録する検査です。 拍動のリズムを見ることで、心臓に関する疾患の有無をみていきます。 (不整脈、心肥大、虚血性心疾患など) |
日帰りドック(消化器コース、プレミアムコース)および一般精密検査の検査を実施しております。
腹部超音波検査では腹部にゼリーを塗り、プローブをあてながら肝臓・胆嚢・腎臓・膵臓・脾臓、膀胱、前立腺などを観察します。
一次検診検査および二次検診での検査、一般精密外来の検査を実施しております。
<乳腺超音波検査でわかること>
※この検査で痛みを伴うことはありません。
受診者さん(患者さん)から採取された臓器、組織について、染色標本を作製し、病理専門医が顕微鏡下で病変部の診断(病理診断)を行ないます。
腫瘍の場合は腫瘍の種類(組織型)、広がり、浸潤などについて診断します。
生検
食道、胃、大腸内視鏡、子宮、肺、乳腺針生検・マンモトーム生検等で採取した組織を標本にして、顕微鏡で観察し癌の存在や種類を診断しています。また、免疫染色などを追加して、治療の方針を決めていきます。
手術材料
胃、大腸、食道、乳腺の手術材料の癌の種類、広がりや大きさと転移等について診断します。手術の評価や追加治療の必要性の有無などを決めるための詳細な診断を行っています。診断に際しては、免疫染色や特殊染色などを実施して診断精度の向上に努めています。また、早期胃がんは摘出臓器の全てを標本とし、顕微鏡観察し、X線、内視鏡画像と対比して検診精度の向上に努めています。
病理標本作製と病理診断
①ホルマリン固定された手術材料の切り出し
②切り出しされた手術材料をパラフィンに包埋
③冷えて固まった組織ブロック
④ミクロトームで③のブロックを3μに薄切
⑤薄切した切片をガラスに貼る
⑥ガラスに貼った切片を染色する
⑦病理医が標本をみて病理診断をする
ヘマトキシリン・エオジン 染色
細胞診検査は、ひとの体から採取される材料を顕微鏡で観察し、異型細胞(がん細胞)・ウィルス感染の有無・炎症など様々な情報を見つけ出す検査です。
細胞検査士の認定資格をもつ臨床検査技師が担当しています。
当センターでは、婦人科がん検診(子宮頚部・体部)、肺がん検診(蓄痰)乳がん検診(腫瘍穿刺吸引、乳頭分泌物)を対象としています。
それぞれの診療科から提出された細胞診の検査材料を、顕微鏡で観察する(細胞診標本)にしてから細胞判定をしますが、良い細胞診標本の作製は細胞判定の上でとても大事なことです。
<細胞診検体採取から報告まで>
検査材料をガラスに塗抹し、固定後に細胞の核と細胞質がわかるように染色をします。細胞検査士は、染色された標本を顕微鏡で観察し異型細胞を見つけますが、炎症などの所見も見ています。異型細胞のある標本は、病理医や細胞診専門医が標本をチェックし最終的な「細胞診断」をします。
婦人科医師が専用の器具を用いて子宮の入り口から細胞を採取し、ガラスに塗抹します。
蓄痰の検査は、ご自身で3日間分の痰を容器に集めていただきます。
痰の粘液を溶かす試薬が、容器蓋の内側に塗られています。必ず、中のシールを完全に剥がしてから痰をいれ、強く振って良く混和してください。
粘液がよく溶けた痰は、細胞が均一になるので検査に適した標本が作製できます。
乳腺に「しこり」がある場合は針を刺し(乳腺科の医師)、ガラスに細胞を塗抹します。乳汁はガラスに直接細胞を採取します。
<標本鏡検の様子>
染色標本を顕微鏡で隅から隅まで観察
細胞診専門医とディスカッション
細胞検査室職員は、日常業務の他に当センター付設の「細胞検査士養成所」の学生指導も担当しています。
病理組織診断、細胞診最終診断は専門医が行っています。
職 | 医師名 | 資格・経歴 |
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検査科部長 | 山村 彰彦 (やまむら あきひこ) |
日本病理学会病理専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医 |